プリンな彼女

story5

「祐里香、おはよう。金曜日はごめんね」

週が明けた月曜日の朝一番、理子が祐里香の元へやって来た。
別に謝られるようなことはしていないし、あたしこそ途中で抜けてしまい申し訳ないと思っていたのに。

「おはよう、理子。こっちこそ、ごめんね。途中で抜けたりして」
「ううん、いいの。なんだ、言ってくれればいいのに」
「何を?」
「稲葉君と付き合ってること」
「はぁ!?誰が、付き合ってるって??」
「祐里香、声大きいって」

言った後に手で口を押さえても、時既に遅し…。
朝っぱらから大声を張り上げた祐里香に、みんなの視線が集まった。
───だって、しょうがないでしょ?
理子ったら、あたしと稲葉が付き合ってるなんて、わけのわからないことを言うからっ。

「ちょっ、理子。こっち、来て」

あたしは理子の背中を押すようにして、フロアを出る。

「えっ、付き合ってるんでしょ?」
「付き合ってないってっ!どこをどう間違えたら、そうなるのよ」
「だって稲葉君、祐里香のこと心配して連れて帰ったんじゃないの?」

あの様子では、酔っていた祐里香を両隣の男性が狙っているのを見ていられなくて、稲葉が連れ帰ったとしか思えなかった。
二人が出て行ってしまった後、残ったメンバ─で誘ったことを後悔していたのだ。

「心配したのは間違いないけど、付き合ってるからじゃないから」
「いいのよ、隠さなくっても。あたしは稲葉君のこと、ちょっといいかなって思っただけだから。可愛い後輩の彼氏を取ったりするような、小悪魔じゃないわよ」

「じゃあね」と理子は行ってしまった。
───あ~ぁ、完全にあたしと稲葉が付き合ってるって思ってるわよね。

あの後は彼の『安心しろ、俺がちゃんと送ってやるから』の言葉通り、あたしの家まで送り届けてもらった。
もちろんそれだけで、稲葉との間には何もない。

でも、困ったなぁ…理子のことだから、絶対みんなにしゃべっちゃうに違いないんだもん。
迷惑だろうな、稲葉。
はぁ…ぁ…。
後で話しておかないと…。
厄介なことになったなと思う、祐里香だった。
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