プリンな彼女


「祐里香さん」

あたしが給湯室でコ─ヒ─を入れていると、真紀ちゃんが入って来た。

「真紀ちゃんも、休憩?」
「はい」

彼女は棚にストックしていたティ─パックを取り出して、紅茶を入れる。

「祐里香さん、稲葉さんとお付き合いしていたんですね」
「え…」

どうしてそれを…。
───まさか…もう、そんな噂が出回っているんじゃないでしょうねぇ…。

「噂になってますよ。稲葉さんとお付き合いしてるって」
「噂?」

───あちゃ─。
理子ったら、もうっ!口が早いんだからっ。

「はい。お似合いのカップルだって」
「何、それ。お似合いも何もないの。あたし達、付き合ってなんかないんだから」
「え、ほんとですか?」

「そうなんですかぁ…」とまぁ、妙にガッカリしている真紀ちゃんにこっちの方が悪い気になってくる。
───そんなにガッカリすることでも、ないでしょうに…。

「うん。金曜日に合コンに誘われて行ったんだけど、その時、稲葉も連れて来て欲しいって言われて一緒に行ったのよ。あたし、あんまりお酒が飲めないのに周りの人に飲まされて、それを稲葉が助けてくれたって言うか、お店から連れ出してくれたの。それで、誤解されちゃったみたい」
「稲葉さん、祐里香さんのことが、心配だったんですね」
「心配とか、そういうことは、あんまり思ってないと思うんだけど」

稲葉がそこまで考えていてくれたかどうかは、わからない。
彼は、誰にでも優しいし。

「そんなことないですって。稲葉さんが合コンに行ったっていうだけでも、祐里香さんがいたからですよ」

『好きじゃないけど、時と場合にもよるな』とか言ってたけど、あたしがいたからっていうのは絶対違うと思うのよね。
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