プリンな彼女
「残業か?」
「うん。今日中に資料を作らなきゃならなくなって。水曜日くらいまでって、言われてたんだけど」
「そうか」

「はい、これ」と彼に渡されたのは、白いビニ─ル袋。

「何?」
「売店で買って来たから、たいしたもんじゃないけど」

袋の中を見ると、サンドイッチとプリンが3つ。
気を利かせて、買って来てくれたのだろう。
でも、なんでプリンが3つなの!?

「わざわざ、ありがと」
「ついでだから」
「でも、何でプリンが3つなの?」
「お前、プリン好きなんだろ」
「好きだけど、いくらなんでも3つも食べないわよ」
「新井なら、それくらい普通に食べるんじゃないかと思って」
「失礼ね」

───もらっておきながら文句を言うのもなんだけど、3つも食べる女に思われてたわけ?

「はい、これ。1つあげる」
「いいよ」
「いいから。これ、売店のだからって、侮れないのよ。美味しいから、食べてみて。嫌い?プリン」
「好きだよ」

プリンが好きって言われただけなのに、なんだか変な気分…。
もちろん、稲葉は祐里香への想いを掛けていたのだけれど…。

「じゃあ、食べて」
「ありがとう」
「稲葉にもらったのに、お礼もおかしな話ね。そうだ、あたし達が付き合ってるって噂が流れてるみたいだけど、ごめんね。違うって言ったんだけど、理子が勝手に思い込んじゃって」
「いや、俺は気にしてないから」
「なら、いいんだけど」

稲葉も周りの人達に同じようなことを聞かれていたのだが、彼は祐里香と付き合っているという噂を否定していなかったとは…。
そんなこととは露知らず、ありがたく彼にもらったプリンをいただく祐里香だった。
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