プリンな彼女
「もうっ、祐里香さんったら。いいですよ、恥ずかしがらなくても」
「別に恥ずかしがってないけど」

どこをどう間違ったら、そう見えるのかしらねぇ。

「もらえなかったら稲葉さん、泣いちゃいますよ」
「あの男が?あはは、あたしにプレゼントをもらえないくらいで、泣くような柔な男じゃないわよ」
「そんなことないですって。稲葉さん、待ってますよ。祐里香さんからの誕生日プレゼント」

───そうなのかなぁ…って、何あたしったら、真紀ちゃんの言うことに納得してるのよ。
だいたいねぇ、稲葉に限って、そんなことないっていうのに…。
でも、同期だし、最近少しお世話になってるし…。
なんだか、急に気になり始めた祐里香だった。

+++

定時で上がれた会社帰り、雑誌で見た新作の口紅を買おうとあたしは、デパ─トに寄って行くことにした。
お目当てのショップの前に行くと、男性物のトワレが並んでいるのが目に入る。

「いらっしゃいませ。こちらは、新商品ですごい人気なんですよ。彼氏にプレゼントしてみたら、いかがですか?」

とは言われても、彼氏なんていないし…。
───あっ、そう言えば稲葉の誕生日。
でも、あの男がトワレ?
似合わな~い。
あれ?でも稲葉って、微かに何かの香りがしてたかも…。

徹夜してソファ─で転寝していた時に掛けてくれた彼のス─ツのジャケットから、微かに何かの香りがしたのを思い出した。
結構、好きなのかもしれないわね。
だけど、急にこんなものを渡したりしたら、変に思わないかしら?
仕事を手伝ったお礼に焼肉いっぱい奢ってもらったし、酔って家まで送ってもらったり、この前はプリンももらっちゃったしね。
実は、世話になってるんだわ、あたしったら。
やっぱり、無視っていうわけにもいかないわよねぇ。

ヨッシャッ、一つ買ってみるか。

自分の口紅を買うはずだったのに、なぜか稲葉のプレゼントのトワレを買って帰った祐里香だった。
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