プリンな彼女
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それから、数日後の稲葉の誕生日。

祐里香のバックの中には、稲葉への誕生日プレゼントが入っている。
───こういうのって、いつ渡せばいいのかしら?
どこかに行ったお土産でも渡すなら簡単だけど、プレゼントとなるとタイミングが難しい。
二人っきりになる時などほとんどないし、かといって呼び出すのもねぇ…。

そんなことを考えながら給湯室でコ─ヒ─を入れていると、向かい側にある非常階段から女性の声が聞こえてきた。

「お誕生日、おめでとうございます。あの…これ、つまらないものなんですけど」
「ありがとう。でも、本当にこういうのは困るんだ。君のことは良く知らないし、もらう理由がわからない」

───あれ?この声は、稲葉。
そして、女性の声は多分隣の部の人。
小柄で可愛らしく、声に特徴があるからすぐにわかった。

「それは…」
「ごめん。悪いけど、受け取れないよ。君の気持ちだけ、もらっておくから」

安易に受け取れば、相手は勘違いするかもしれない。
だからこそ、稲葉は受け取れなかったのだろう。

「わかりました。すみませんでした」

そう言い残して、彼女は先にその場を離れて行った。
───やっぱり、稲葉ってモテルのねぇ。

「なんだ、新井。ここにいたのか」
「いちゃ、悪い?」
「いや、聞いてたのか」
「人聞きが悪い。聞いてたのかじゃなくて、偶然聞こえちゃったのよ」

───あたしが悪いみたいな言い方、しないでくれる?

「今日はこれで、5人目なんだよな。何で俺になんかって、思うんだけど」
「うそっ、5人目!?」

そんなに!?ひぇ~。
やぁ、モテ男は違うなぁ。
って、納得している場合じゃなくて、ということは、あたしのプレゼントも受け取ってもらえないわよね。
あぁ…せっかく、奮発して買ったのに…。
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