プリンな彼女


───くそぉ、稲葉のやつ…。
気のせいか、みんなの視線が自分に集まっているような…特に女子社員の…。
何で、あたしがっ。
ブツブツ言いながら、給湯室でコ─ヒ─を入れていると真紀ちゃんが入って来た。
ちょうどこの時間は、お互いの休憩タイムにあたっているようだ。

「祐・里・香さん。稲葉さん、トワレを変えたんですね。聞きましたよ、祐里香さんからのプレゼントだって」
「真紀ちゃん、それ誰に聞いたの?」
「え?誰って、稲葉さんにですよ」
「あぁ…何であいつはそういうこと、みんなに言うかなぁ…」

───自分で言うやつが、どこにいるのよ…。
祐里香は大きくため息を吐きながら、横向きで壁に寄りかかる。
どっと疲れが出てきたようで、前身の力が抜けてなんだか自力では立っていられない。

「でも、稲葉さん。とっても嬉しそうでしたよ」
「そう?」

───まぁね、昨日の帰りにプレゼントを渡した時の彼は、確かに嬉しそうだったけど…。
だからって、いきなりあたしが彼女になっちゃうっていうのはどうなのよ。
勘違いも、いいとこだわ…。

「祐里香さんも、やりますね」
「やるって、何が?」
「告白したんですよね?稲葉さんに」
「はぁ!?ちょっ、ちょっと待ってよ。どうして、あたしが稲葉に告白なんてぇ」

だ・か・ら!どこをどう間違ったら、そういう話になるわけ?
っつうか、稲葉がわけわかんないことを触れ回るから、こんなおかしな話になるんじゃないっ!
やっと、前回の噂が静まったと思ったのに…。

「もうっ、隠さなくてもいいですよ。社内で話題になってますからね、超ビックカップルが誕生したって」
「話題って何?超ビックカップルって…」

もしかして…だから、みんなの視線が…。
はぁ…。

「羨ましいですぅ。私もお二人みたいな素敵なカップルになれたら、いいんですけど」

いや、ちっとも羨ましくないから。
───あっ、そう言えば、真紀ちゃんの告白はどうなったのかしら?
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