プリンな彼女
「ねぇ、真紀ちゃん。真紀ちゃんの告白は、どうなったの?上手くいった?」
「おかげさまで、なんとか」
「そっかぁ、良かった。聞いていいものか迷ったんだけど、気になって」

良かった良かったと思った祐里香だったが、真紀ちゃんの表情は複雑だ。
上手くいったはずなのに、どうかしたのだろうか?

「実を言うと、ちょっと無理矢理っぽかったんですけどね」
「無理矢理?」
「私の方が、一方的って言うんでしょうか…」

───彼は、押しに負けたってわけね。
だけど、その彼はどういう人なのかしらねぇ。
こんな可愛い子に告白されて、即答しないなんて。

「大丈夫よ。彼はOKしてくれたんだから、いつもの調子で真紀ちゃんがガンガン押しまくれば」
「嫌われないでしょうか」
「そんなことするようだったら、すぐあたしに言って。相手の男の首根っこひっ捕まえて、ボコボコにしてやるんだからっ」

───え…
それはちょっと…。
祐里香さんの気持ちはありがたいんですけど、それだけは…。
相手が相手だけに、真紀自身もそれだけは非常に困る。
あぁ、でも祐里香さん、本当にやりそうなんだもの。

「祐里香さん、何もそこまで…」
「任せて、真紀ちゃんは何も心配することないんだから。それより、あたしちょっと稲葉に一言言って来るわね」

「ったく、勝手なこと触れ回って…」と、祐里香は一人出て行ってしまった。
その後姿を見つめながら、例え自分が嫌われるようなことがあっても祐里香には当分言わない方が彼のため、と思う真紀だった。

+++

どうしても稲葉に一言言っておかないと気がすまない祐里香は、稲葉が一人のところを狙って声を掛ける。
二人でいるところを誰かに見られると、厄介だから。

「いいところにいたわ。稲葉、ちょっと話があるんだけど」
「あぁ、何?」
「ごめん、忙しかった?」
「いや、ちょうどよかった。これ、やるよ」

稲葉が胸ポケットから取り出したのは、祐里香が大好きなバンドのコンサ─トチケットだった。
───やだ、これ行きたかったのよ。
だけど、超人気で行きたくてもなかなかチケット取れないし。
なのに、何で稲葉がこれを?
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