プリンな彼女
「いいんですか?」
「いいよ。持ってくれたお礼」

───あぁ、こういう優しい人が彼氏だったらいいのよねぇ。
それに比べて、稲葉ったら…。
何で、ここに稲葉が出てくるのよぉ。
最近、あたし変よ。
何かにつけて、稲葉のことばかり浮かんでくるし…。
それを打ち消すように頭を左右に振ると、あたしは自分の席に戻って行った。



真紀ちゃん、そろそろ来る頃かしら?
そんなことを考えながらあたしは給湯室でコ─ヒ─を入れていると、ナイスタイミングで彼女が入って来た。

「あっ、真紀ちゃん。ちょうど、来る頃かなって待ってたのよ」
「祐里香さんがここに入るのを見掛けたので、後を付いてきちゃいました」

彼女は、棚からカップを取り出すと紅茶を入れる。

「そうだ。さっき、チョコレ─トもらったの一緒に食べよう?小山課長から、海外のお土産みたい」
「えっ、小山…課長?」

───ゲホッゲホッ
真紀ちゃんは飲んでいた紅茶が気管に入ってしまったようで、苦しそう。
慌てて、あたしは背中を撫でてあげた。

「ちょっ、大丈夫?真紀ちゃん。小山課長が、どうかした?」
「いっ、いえ」

───どうかしたのかしら?真紀ちゃん。
小山課長って言っただけで、咽るなんて…。

「あの、祐里香さん。今夜、予定とかありますか?」
「ん?予定?ないない。そんなの」

───予定もないあたしって、どうなのよ…。
はぁ…。

「でしたら、駅前に出来たお店に行ってみませんか?」
「駅前って、あの可愛らしいお店?」

「そうです。ちょっと気になって」と言う真紀ちゃんに、あたしも同じく行ってみたかったのよね。
つい最近OPENしたばかりで、外観が可愛らしいお店。
気軽にワインが楽しめるって、誰かが話しているのを聞いたのよ。
あたしは、あんまり飲めないんだけど。

「行く。あたしも気になってたのよ」
「じゃあ、行きましょう。私、予約入れておきますね」

───そうだ、真紀ちゃんの彼氏の話を聞かなくっちゃ。
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