プリンな彼女


今日は残業もなく定時で会社を出ると、真紀ちゃんとあたしは駅前のお店に直行する。
既に店内は満席にちかく、空いている席も全部予約席の札が置いてある。

「込んでますね」
「うん。予約しなかったら、入れなかったかも」

メニュ─を見ると、噂通りワインの種類が豊富。
そして料理も可愛らしいお店の概観同様、女性好みのものばかり。
あっ、デザ─トにはちゃんとプリンもあるしっ!

「真紀ちゃん、ワインの種類がいっぱい。今日は、あたしも飲んじゃおっかな」
「いっちゃいますか?」

女同士だと、つい大胆になっちゃうのよね。
お勧めの赤ワインをフルボトルで頼んで、「乾杯」ってグラスをカチンと合わせる。

「ねぇねぇ。真紀ちゃんの彼氏って、どんな人なの?」
「えっと…。実は、そのお話をしようかなって思ってたんです。あの…小山課長なんです」
「へ!?小山課長って、あの小山課長?」

───うそ…真紀ちゃんの彼氏って、小山課長だったの?
だって、10歳くらい違うじゃない。
それに真紀ちゃんから、告白したんでしょ?
無理やりっぽかった、とは言ってたけど…。
あ…。

「あっ…もしかして、真紀ちゃん。あたしが、『相手の男の首根っこひっ捕まえて、ボコボコにしてやるんだからっ』って言ったの課長に話した?」
「え…」
「話したのね?」

あたしが意地悪く言うと、真紀ちゃんが俯いてしまった。
───だから課長、あたしの顔を見て妙におどおどしてたのね。

「すみません」
「じゃあ、これも言っておいて。あたしも、さすがに課長をボコボコにはしないからって。でも、真紀ちゃんを悲しませるようなことをした場合は、いくら課長でも例外だから」
「わかりました。祐里香さんが付いていてくれれば、安心です」
「だけど、真紀ちゃんの彼氏が課長なんてねぇ。優しいし、素敵だし、包容力もあっていいわよね。稲葉とは大違い」
「そんなことないですよ。稲葉さん、とっても優しいし、何より祐里香さんにゾッコンじゃないですかぁ」
「どうして、稲葉よ。あいつは、単なる同期ってだけで…」

───あいつは、単に同期で同僚なだけ…。
他に何もないのに…。
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