プリンな彼女
「稲葉さんと小山課長を比べてる辺りで、意識してるってことですよ。祐里香さんも稲葉さんのことが、好きなんですね」
「好き?あたしが?」

───そんなわけ…。
あたしが、稲葉を好きなんてこと…。

「飲んで下さい」と真紀ちゃんに言われて、あんまりお酒が強くないのにガンガン飲んでしまったあたし───。


─ *** ─


「おい、新井。大丈夫か?」

───なんか、稲葉の声が聞こえたような気がするんだけど…。

「新井」
「稲…葉?」

───やっぱり、空耳じゃぁなかったみたい。
でも、何で稲葉がここにいるの?って、あたしはどこにいたんだっけ?
そうそう、確か真紀ちゃんとご飯を食べてたはずだけど…。

「お前、飲み過ぎだぞ」
「どうして、稲葉がここにいるの?」
「あぁ、山本さんにお前が酔っ払って動けないって連絡もらった」

───そうだったわ。
あたし、調子に乗ってワインいっぱい飲んじゃったのよ。
それより、真紀ちゃんは?
辺りを見回してみるが、彼女の姿はない。

「真紀ちゃんは?」
「それがさ。なんでか小山課長がいたんだけど、3人一緒だったのか?」

思い出した。
真紀ちゃんと小山課長、付き合ってるんだったわね。
───うふふ、課長ちゃんと迎えに来たんだ。
やるじゃない。

「なんだよ。ニヤついたりして」
「ううん。なんでもない」
「変なやつ。それより、気分はどうだ?気持ち悪いとか、ないか?」

優しく声をかけられて、またもや心臓の鼓動が早まる。
全く、身体に悪いったらありゃしない。

「大丈夫。ごめんね、迷惑かけて」
「いや。俺が近くにいる時はいいけど、今度からはほどほどに頼むよ」
「うん」

稲葉はあたしの腰に手を回し、抱きかかえるようにして歩いて行く。
それが暖かくて、心地よくて…。
ぴったりとくっついて自分から彼の肩に凭れると、微かにあたしがあげたトワレの香りがした。
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