プリンな彼女
『まぁ、俺としては嬉しいけど』
「何、馬鹿なこと言ってるの。で、何の用だったの?」
『あっ、そうだ。あのさ、明日コンサ─トに行く前に軽く食事でもどうかなって思って』
「食事?」

───まぁね、コンサ─トが始まるのは18時だから、ちょっとは食べてからの方がいいけど。
でも、稲葉とよ?

『ホ─ルの近くにいい店があるんだけど。もちろん、超美味いプリンもあるぞ?』
「えっ、プリン?超美味しいの?」

───やだ。
あたしったら、何食い付いてるのよ。
でも、超美味しいって言うプリンに惹かれちゃう~。

と、予想通りの祐里香の反応に稲葉は電話の向こうでニンマリしてしまう。
この分だと目を輝かせているな、きっと。

『俺と一緒が嫌だって言うなら、無理には誘わないが』
「行く行くぅ」
『我慢しなくて、いいんだぞ?』
「ううん。我慢なんて、してないわよ」
『なら、いいいけど』

約束していた時間より少し早めに待ち合わせることにして、電話を切った。

───やぁ~ん、プリンプリン。
って、それどころじゃなくってっ!
早く、洋服決めないとっ。
もう一度、服を引っ張り出してあ~でもない、こ~でもないと鏡の前に向かっていた祐里香だった。

+++

結局、夜中まで洋服を決めるのに時間が掛かってしまい、昼過ぎまで寝ていたあたしは急いで掃除やら洗濯を済ませて稲葉との待ち合わせの場所に行く。
───どうかな?この服。
最近買った一番新しい物だったけど、店員さんに勧められるままに買ってしまったちょっと露出度の高い服。
絶対会社には着ていけないものだったから、こういう機会しか着られないとは思うんだけど…。

一方、稲葉は時間より少し早く待ち合わせ場所に到着していた。
というのも、遅れると祐里香が文句を言いそうだから…。
時計に目を向けてから改札の方へ視線を動かすと、たくさんの人が出てくる。
ちょうど電車が到着したのだろう。
じっと見ていると、一際目を引く女性がいた。
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