プリンな彼女
───オイオイ、昨日は服が気に入らないとか言ってたが…。
めちゃめちゃ、可愛いだろっ!!
彼女はふわふわした素材のワンピ─ス姿にスタイルのいいスラっとした足が、これでもかっていうくらい見えている。
っつうか、短いぞ!スカ─ト丈がっ。
それに何だ、あの胸元はっ!
見えちまうじゃないかっ。

思わず、稲葉は叫びそうになった。
それくらい、露出度が高い。
知り合いじゃなければ目の保養になっていいかもしれないが、好きな彼女だぞ?
目のやりどころに困るというか、他所の男共にまでさらしてどうするんだ…。

「稲葉。ごめんね、遅くなって」
「あ?いや、ちょうどだから」

なんだか視線を合わせようとしない稲葉を不審に思う祐里香だったが、やっぱり自分の格好が変だったのか…。

「変だった?この格好」
「え?ちっ、違うよ。そうじゃなくってっ。えっと…似合い過ぎっていうか、めちゃめちゃ可愛いけど、それちょっと露出が高過ぎだろ。胸も見えそうだし、スカ─ト丈短いし、俺の前ではいいけど他のやつらの前では…。って、俺何言ってんだ」
「ちょっ、稲葉」

それだけ言うと稲葉はあたしの手を掴んで、引っ張るようにして歩き出す。
変だったわけじゃないことに少しだけ安心したけど、ちょっとだけ赤くなってる稲葉が可愛いかもって思ったりして…。

いい店があるんだけどと言っていたのは、ホ─ルの目と鼻の先にあるティ─ル─ム。
───稲葉ったら、いつの間にこんなお店を見つけたわけ?

中に入ると、二人と同じようにこれから始まるコンサ─トに行くであろう若い女性やカップル達で一杯だった。
運よく空いていた席に向かい合って座ったが、どうもお互い緊張してしまう。
飲みに行ったりはしても、まだ明るい時間に二人だけでというのは初めてだったから。

「へぇ~稲葉って、こういうところにも来るんだぁ」
「あ?来るっていうか、姉貴にここのケ─キを買って来いって、よく頼まれてさ」
「稲葉って、お姉さんがいるの?」

───知らなかった。
でも、そんな感じよね。
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