プリンな彼女
「あぁ、3歳年上なんだけどな」
「ふ~ん。あたしは弟だから、お姉さんってちょっと憧れかも」
「そうか?うるさいだけだぞ」

あたしには2歳年下の弟がいるんだけど、お姉さんが憧れだった。
稲葉のお姉さんって、どんな人なのかな?
きっと綺麗な人なんだろうなぁ。

二人はパスタと、もちろんデザ─トにプリンを頼む。
コンサ─トも楽しみだったんだけど、プリンも楽しみだったのよ。

「あっ、そうそう。真紀ちゃんもコンサ─トに来たかったって。あたし、チケットもらったの自慢して、申し訳ないことしちゃった」
「そっか。じゃあ、今度はこっそり4枚くれるように頼むか」
「うん。そうして」

稲葉は真紀ちゃんが小山課長と付き合ってること、まだ知らないのよね?
うふふ、今日は真紀ちゃん、課長とデ─トだって言ってたけど、どこに行ってるのかしらね。
なんて会話をしながらパスタを食べ終えると、デザ─トのプリンが運ばれて来た。

「わぁ、美味しそうっ!」

わりとしっかりしたプリンにアイスクリ─ムが添えられて、とろっとしたソ─スがかかってる。
見るからに美味しそうなプリンに釘付けになってしまう。

「いただきま~す」

この後は言わなくてもわかると思うけど、稲葉の言っていた通り、超美味しい。
これなら、何個でもいけそうだわ。

「すっごく、美味しい」
「良かった。だったら、俺のもやるよ」
「え?稲葉、プリン好きだって言ってたのに」
「好きだけど、新井は一皿じゃ足りないと思って」
「どういう意味よ。あたしは、そんなに大食いじゃぁ、ありませんっ」

何個でもいけそうって思ったのは確かだけど、そんな稲葉の分までいただくほど大食い女じゃありませんっ。

「変な意味じゃないよ。俺、美味しそうにプリン食べてる新井を見てるのが好きだから」
「え?」
「だから、ほら」
「うん」

稲葉にプリンのお皿を差し出されて、あたしはありがたくそれを頂戴する。
───でもなんか、ものすごく恥ずかしいことを言われたような…。
食べ物に弱いあたしは、それ以上深く考えることもなく、美味しくいただいたのでした。
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