プリンな彼女
「私もちょっとムッとしちゃって、課長もそれがわかったんだと思います。お互い気マズイまま別れたんですけど、電話もしにくくて、どうしたらいいか」
「そっかぁ。そういうことだったの」

───なるほどね。
課長に浮いた話がなかったのも、理由はそんなところにあったのかもしれない。
だからって、このままってわけにはいかないわよね。
せっかく想いが通じたっていうのに…。
なんとかならないかしら?

祐里香の中にお節介心がフツフツと沸き上がってくる。

「真紀ちゃん、あたしに任せて。なんとかするから」
「えっ、祐里香さんが?」

「うん」と胸をポンッと叩く祐里香に驚き顔の真紀ちゃん。
まさか…。

「安心して、ボコボコにはしないから」

あたしはニッコリと微笑むと、『あの奥手課長をどうやって変貌させるか』を真剣に考えるのだった。

+++

「稲葉」
「ごめん。ちょっと待って、これ1枚で終わるから」
「ううん、コピ─をしにきたわけじゃないから」

稲葉を探していたあたしは、ちょうどコピ─をしていた彼を見つけて声を掛けた。

「この前は、コンサ─ト楽しかった。連れて行ってくれてありがとう」
「いや、俺こそ楽しかったよ。そんなことを言いに来たのか?」
「そうじゃなくって、あのね───」

あたしは周りを見回して誰もいないことを確認すると、稲葉にそっと耳打ちする。

「あ?課長を?」
「しっ!稲葉、声大きいって」

慌ててあたしは、稲葉の口を手で塞ぐ。

「悪い。で、何でまた」
「いいから、お願い」
「なんかわからないけど、そう言うなら」
「良かった。さすが、稲葉」

好きな彼女に『お願い』なんて可愛く言われて、稲葉もダメだとは言えなかった。
しかし、小山課長を飲みに誘えなんて…。
何を考えてるんだ?新井は…。
変なことにならなければいいけど。
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