プリンな彼女
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小山課長と稲葉は、一軒の居酒屋に足を運ぶ。
『相談があるんです』などと嘘をついて誘ったはいいが、早く祐里香が来ないかと何度も時計に目を向けてしまう。

「稲葉君が僕を誘うなんて、珍しいね。相談って、何か悩み事でも?」
「いえ、そんな大したことじゃ」

新井~早く来いよ。
約束の時間をとうに過ぎているってのに…。
適当にはぐらかしても会話が続かない。

『遅いな、新井のやつ』
「新井さんが、どうしたんだい?」
「えっ、別に。なんでもないんです」
「そう?君達付き合ってるって、聞いたけど。あっ、言っておくけど僕が上司だからこんなことを言ってるんじゃないよ。プライベ─トまで、口を挟んだりしないから」

課長の耳にまで入っていたとは…。
自分でほのめかしておきながら、噂というのは恐ろしい。

「実は、まだ付き合ってはいないんです」
「まだ?」

祐里香の話をしようとしたところにちょうど飛び込んできたのは、その当人だった。

「稲葉、ごめんね。遅くなって」
「えっ、新井さん?!どうして」

驚き顔の課長を他所にあたしは稲葉の前に前にあったジョッキを奪い取ると、お酒が弱いっていうのにそれを半分くらい一気に飲み干した。

「おい、新井。お前、そんなに飲んで大丈夫なのか?」
「だって、走って来たから喉が渇いちゃって」

それを見ていた小山課長は、すかさずジョッキを2つ追加で注文する。

「どうやら、話があるのは稲葉君じゃなくて、新井さんのようだね?」
「すみません。あたしが、稲葉に頼んだんです」
「それは構わないけど、どうしたんだい?何かあったのかい?」

こんなふうに呼び出したりするのは悪いと思ったが、いきなり祐里香が言うよりも稲葉が誘う方が当たり障りがないような気がしたから。
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