プリンな彼女

story11

「稲葉、昨日はごめんね。関係ないのに付き合わせちゃって」

朝一番で稲葉は会議が入っていたらしく、戻って来たのを見計らって彼のところへ行くと昨日のことを謝っておく。
小山課長に女性をリ─ドする方法を伝授しようと稲葉まで巻き込んで、自分はすっかり酔っ払ってしまった祐里香。
挙句の果てに、また彼に家まで送ってもらうはめになって…。

「課長も迷惑だったんじゃ…」
「俺は構わないよ、いつものことだしな。それに課長も新井のお節介には感謝してるって、気にしないように言われたから」
「ならいいんだけど」

───やっぱり、お節介なんじゃないねぇ。
あぁ…あたしって、どうしてこう余計なことばっかりしちゃうのかしら。

「そうそう、また急ぎの仕事が入ってさ、新井にしかできないだろうし頼めないから」
「えぇ、また?」
「頼むよ。プリン買ってやるからさ」
「あのねぇ、子供じゃないんだから物で釣るのはやめてくれる?」

───ったく、子ども扱いなんだからっ。
まぁね、稲葉には迷惑掛けてばっかりだし、手伝うのは構わないんだけど、なんか一言多いのよね。

「あれ?お子様じゃなかったのか?」
「もうっ!」
「嘘だよ、そんなに怒るなって。本気で新井じゃないと無理なんだ、頼むよ」

───何、マジになってんのよ。
あたしだってねぇ、そんなに器が小さい女じゃないんですからね。

「わかったわよ。やればいいんでしょ、やれば」
「さすが、新井。そう言うと思ったんだ」
「調子いいわね」
「じゃあ、俺すぐにまとめるからさ」

初めから断るわけがないって思ってるくせにぃ。
そう思いながらも稲葉の背中を見つめながら、仕事だし嫌って言えないんだから仕方ないなと思う。

「祐里香さん、なんだか楽しそうですね」

そんな稲葉とあたしのやり取りを見ていた真紀ちゃんが、やって来た。
本人達は普通の会話をしているつもりなのに、はたから見ると楽しそうに見えてしまうのだろうか?
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