プリンな彼女
「楽しくなんてないわよ。また、稲葉に仕事を頼まれちゃった。あたしにしかできないとかなんとか言って、調子いいんだから」
「急に期限が早まっちゃったやつですね。私ではお役に立てなくて、祐里香さんにお願いするしかないって言ってました」

朝一番の会議でその話が出たらしく、祐里香に頼むしかないだろうということになったらしい。
それだけ、頼りにされているということなのだが…。

「まぁ、いいんだけどね。あいつったら、あたしをプリンで釣るから。ったく、お子様扱いなんだもん」
「それは、祐里香さんが可愛いからですよ」
「なんか、納得できな~い」

膨れっ面の祐里香だったが、そう言えば、真紀ちゃんは課長はどうなったのかしら?
電話を掛けるようにと、好きだって言葉も忘れずにとは言ったものの、課長がちゃんと実行したのかどうか…。

「そんな膨れないで下さいね。可愛い顔が台無しですよ?実は私、祐里香さんにお礼を言いに来たんです」
「お礼?」

迷惑ばっかり掛けているけど、お礼を言われるようなことはしてないと思うんだけど…。
全く思い当たる節がない様子のあたしに真紀ちゃんが、少しはにかむように話始めた。

「はい。課長から、昨日電話があって」
「あたしも気になってたの。余計なことをしちゃったんじゃないかって」
「いいえ、祐里香さんのおかげです。課長から好きって言ってもらえたの、初めてなんです。すっごく嬉しくて」
「えっ、ほんと?」

───うわぁっ、課長やるじゃない。
ちゃんと言ってくれたんだ。
いやぁ、でも良かったぁ。

「はい。稲葉さんも協力してくれたそうですね。課長も言ってましたよ、早く二人がうまくいけばいいのにって」
「はぁ?何、うまくって。あたしと稲葉は───」
「ほら、稲葉さんが呼んでますよ?」
「えっ、あ…うん」

稲葉とは何でもないのに…どうして、こうくっ付けたがるのかしらねぇ…。
真紀ちゃんに背中を押されて、あたしはもっと言いたいことがあったけど、仕方なく稲葉のところへ行く。
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