プリンな彼女
「なんか、買いに行こうか」
「そうだな」

二人は会社を出ると近くのコンビニに行って、おにぎりやらサンドイッチやらを買い込んだ。

「お前、相変わらずプリン好きだな」
「何よ。お子様だって、言いたいわけ?」
「おっ、自覚してるわけか」

───やっぱ、この男ムカつくわ。
別にいいじゃないね。
何歳になっても、好きなものは好きなんだもの。

「稲葉こそ人のことイジメテばかりいないで、少しは大人になったらどうなの?」
「俺は十分大人だけどな。お前があんまりお子様だから、ついからかいたくもなるんだよ」
「・・・・・」

いつもならテンポよく返って来るはずの彼女の返事が返ってこないのを不思議に思って顔を覗き込むと、小さく寝息を立てて眠っていた。
───オイオイ、こんなところでそれもプリン食いながら寝るかよ。
まぁ、徹夜したんだ無理もないけどな。
稲葉は彼女の手からプリンを取ると、そっとソファ─に横たわらせた。
ロッカ─に行き、自分のス─ツのジャケットを持って来て彼女に掛けてやる。
初めて見る寝顔につい見入ってしまう自分がいた。
───こいつ、こんなに睫毛が長かったのか。
普段は全然気付かなかったけど透き通るように白い肌、形のいい鼻と小さな口が彼女はとても綺麗なのだと改めて気付かされる。
───まいったな。これは反則だろう。
こんなの見せ付けられたら理性が効かなくなる。
だけど、無防備なこの姿を他の男にも見せているのだろうか?
考えただけでも、相手の男を殴り倒してしまいそうだった。
───そろそろ、限界だな。
そう小さく吐き捨てると、稲葉は煙草を吸うために喫煙室へ行った。
< 5 / 89 >

この作品をシェア

pagetop