プリンな彼女
「中川なら、帰ったぞ」
「え…どうして、それを」

───何で、稲葉が知ってるのよ。
まさか…え?!

「俺達も帰るか」
「帰るかって、今日中に終わらせろって言ったの自分じゃない」
「あれ?別に来週でもいいから」
「何よ、それ」

───え?
ってことは、稲葉…わざと今日中になんて言ったの?

「ありがと」
「それは、何に対してのありがとうだ?本当なら、ごめんなさいだろ。俺が行くなって、言ったのに」
「ごめん…」
「悪いと思ってるなら、今夜は俺に付き合え。奢ってやるから」
「いいわよ。あたしが奢る」
「じゃあ、手料理で頼むわ」
「はぁ?何よ、手料理って」

───どこをどう間違ったら、手料理になるわけ!!

「俺は、新井の手料理が食べたいんだよ。お前、作れないとか言うなよ?」
「馬鹿にしないでよ。つっ、作れるに決まってるでしょっ」
「だったら、いいだろ」
「わかったわよ。作ればいいんでしょっ、作れば」

とは言ったものの、作れるメニュ─は決まってる。
あんなの食べて、稲葉に呆れられたら困るじゃない…。
会社に戻る途中、彼の背中を見ながらそう呟く祐里香だった。
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