プリンな彼女

story13

「ねぇ、稲葉ぁ。ほんとにうちに来るの?」
「なんだよ、今更」

「だってぇ…」とブツブツ言いながら、稲葉と一緒に肩を並べて歩いているあたしは、なぜかこれから彼を自分の家に連れて行って、あろうことか夕飯を作るはめになったわけで…。
結局急ぎの仕事と言っていたものも、来週に回すことになって…それもこれも、勢いであんなことを言ってしまった自分が悪いんだけど…。

「さっきの自信は、どこへ行ったんだ?」
「えっ、ほらっあたしの作ったものなんて食べて、お腹壊すかもしれないしっ」
「あ?お前、腹を壊すようなもの、俺に食べさせる気か?」
「そっ、そういうわけじゃないけど…」

───そういうわけじゃないんだけど…。
こんなことになるなら、本当のことを言っておけば良かったぁ…。
あ~ぁ…。

仕方なく近所のス─パ─で買い物して…。
とはいっても、作れるものはラ─メンとうどんと焼きそばとナポリタンと…って、全部麺ばっかり!!
だって、魚とか焼くと表面だけ黒焦げになって、中身は生みたいな。
それに煮物とかもうまくできないしっ。
他にというと…野菜炒めとかなら、できるわよ?味は保障しないけどね。
でも、お味噌汁とか塩っぱくなっちゃうし…。
インスタントでもいいなら、用意するけど…。

だからっ、まともに作れないんだってぇ。
どうするのよぉ…。

ああ言った手前、さすがに夕飯に麺類を出すわけにもいかず、なんとか見栄えのする炒め物にしたものの。
だけど、野菜を切るところとか、絶対見られたくないわね。

「いつも玄関までだけど、中は綺麗にしてんじゃん」
「そりゃぁ、家の中くらいは片付けてるわよ。誰が来るかわからないし」
「へぇ、俺がいつ来てもいいように気を使ってるわけだ」
「はぁ?!誰が、稲葉にいつ来てもいいようになんて言ったのよ。自惚れるのもいい加減にしたら?」

───どこから、そういう発想が出てくるのかしら。
勝手に友達が来るから、片付けてるんじゃない。
それに稲葉にはいっつも送ってもらってるし…。
汚い部屋、なんて言われたくないもの。
あれ?これじゃあ、稲葉がいつ来てもいいように片付けてるみたいじゃないねぇ。
< 57 / 89 >

この作品をシェア

pagetop