プリンな彼女
「違うの、油が跳ねてね」
「そういうのは、ちゃんと水切りしないから」
「あ~もうっ、わかってるんだから。あっち行っててよぉ」
「はいはい。だけど、もう少し静かに頼むよ」

───いちいち、うるさいんだってぇ。
わかってるんだから。

火が通ったら、後は塩コショウして出来上がり。
う~ん、ちょっと塩っぱかったかしら…。
ご飯のおかずには、これくらい濃い方がね。

「ヨシ、できたぁ」

お味噌汁も具を入れて煮立ったら、味噌を入れてっと。
なんだか、今日は上手く出来たじゃない。
見た目は、パ─フェクトだわ。

「おっ、いい匂い」
「お待たせ。出来たから、食べよ」

ご飯も美味しく炊けたしバッチリ、これで稲葉に文句も言われない…はず?!

「美味そう、いただきます」
「どうぞ、たくさん食べて」

まず、お味噌汁に箸をつけた稲葉だったが、その表情は複雑で…。

「美味しくなかった?」
「いっ、いや。そんなこと…ないよ…」

───誰がどう見ても美味しくないって、顔じゃない。
あたしも急いでお味噌汁を口にしたが…。
うぇっ、塩っぱい…。
何よこれっ、どうしてこんなに塩っぱいのよぉ。
って、ことは…こっちも…。
野菜炒めに同時に箸をつけた稲葉とあたしだったが…。

「「塩っぱいっ!!」」

二人は、用意してあったウ─ロン茶のグラスを一気に飲み干した。

「お前、どういう味付けしてんだよ」
「ごめん…今回は、上手く出来たと思ったんだけど」

───あぁ…やっぱり、ダメだった…。
どうして、あたしってこんなに料理音痴なのかしら…。
これじゃあ、稲葉に嫌われちゃう…。

別に稲葉に嫌われたって…そう思う反面、それがとても寂しいというか、そんなの嫌…。
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