プリンな彼女

story14

───はぁ…。

何なのかしら?
このモヤモヤした感覚は…。

祐里香は朝、会社に出社するなりずっとこの調子だった。

それもこれも、金曜日に稲葉が家に来たりするからっ。
こともあろうに彼の前で泣くとは…。
それに何なのよっ、あの額に触れたものは…。
あたしをからかってるの?それとも…。

───はぁ…。

あたし、どうしちゃったの?
もしかして…やっぱりあたし、稲葉のこと…。

「祐里香さん、どうしたんですか?さっきから、溜め息ばかり」
「えっ。あぁ、真紀ちゃん」

これじゃあ仕事にならないからと祐里香は濃いコ─ヒ─を入れに給湯室に来ていたのだが、ここでも溜め息を吐きまくっていたようだ。

「稲葉さんと、何かあったんですか?」
「え…」

───真紀ちゃん、鋭過ぎ…。
何で、こうもわかっちゃうのかしらねぇ。

「そうなんですね?どうしたんですか?っていうか、まさかあの中川さんって人と映画に行ったんじゃ」
「ううん、行かない。何でかわからないけど、稲葉が断ってくれたみたい。助かったことは助かったんだけど、何で稲葉が中川君と映画に行くことを知っていたのかなのよね」

───そうなのよ。
手料理なんて言うからそのことをすっかり忘れてたんだけど、どうして稲葉が中川君と映画に行くことを知っていたのかなのよね?
初めに誘われた時は、近くで電話での会話を聞いてたからっていうのはわかるのよ。
だけど、次は食堂で言われたんだから稲葉は知らないはずなのに…。

「そうですか。良かったぁ、さすが稲葉さん」
「ねぇ、真紀ちゃん。何か知ってるの?」
「いっ、いえ。私は何も」
「ほんと?」
「ほんとですってっ」

疑いの眼差しで見ている祐里香に真紀は顔の前で手を左右に振って、違うのだということを誠心誠意アピ─ルする。
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