プリンな彼女
「まぁ、いいんだけどね」

───ふぅ…。
危うく稲葉さんに話したことが、バレてしまうところだった。
でも、良かったぁ。
稲葉さん、ちゃんと祐里香さんを中川さんから守ってくれたのね。
ホッと胸を撫で下ろす真紀だったが、はて…祐里香さんのあの溜め息は何なのだろう?

「それで、稲葉さんとは何があったんですか?」
「うん、それがね。成り行きで、稲葉があたしの手料理を食べたいって言い出して…」
「作ってあげたんですか?」
「作ったには作ったんだけど、散々で…」

お味噌汁も野菜炒めも、塩っぱいのなんのったら。
二人してウ─ロン茶を飲み干したけど、それでもまだ治まらなくて…。
まぁ、それはいいんだけど、その後がねぇ…。

「そのことで、稲葉さんに何か言われたんですか?」

───稲葉さん、祐里香さんに何か言っちゃったとか?
ううん、そんなことないわよね。
あの優しい稲葉さんに限って、祐里香さんが傷つくようなことを言うはずがないもの。

「ううん。まぁ、不味いとは言ってたけど、稲葉は料理が得意だから今度教えてくれるって」
「へぇ~稲葉さんが、料理を?意外ですぅ」

真紀ちゃんが、驚くのも無理はない。
あたしだって、稲葉が料理上手なんて未だに信じられないもの。
こればっかりは、本当に作ってもらわないと信じられないわね。

「でしょっ、あの稲葉がよ?」
「え。でも、だったらあの溜め息は何なんですか?」
「そっ、それは…」

────このモヤモヤを真紀ちゃんに話すべき?

「祐里香さん?」
「泣いちゃったの」
「え?誰がですか?」
「この、あ・た・し。こともあろうに稲葉の前でね。だって、悔しかったのよ料理一つまともにできないなんて」

───もう、いい年なのに…
料理一つ満足にできない女って、どうなのよ…。

「可愛いですぅ。祐里香さんっ」

首を傾げる祐里香を、真紀ちゃんはおもむろに抱きしめた。
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