プリンな彼女
「その後、もう一度稲葉さんに自分の作った料理を食べてもらうんです。美味しいって言ってくれたら、いえ、必ず言わせるように頑張って下さいね?そうしたら、彼の胸に飛び込むんです」
「上手くいくかなぁ」
「いくんですぅ」

人のことだとガンガン言ったり、実行できる祐里香だったが、自分のこととなるとてんで自信がない。
それが料理となれば、尚のこと。
それこそ、稲葉に手取り腰取り…じゃなくって、手取り足取り教えてもらわないことには始まらない。
稲葉には迷惑を掛けちゃうけど、この際彼に甘えてみるかぁ。

祐里香は早速、稲葉に頼んでみることにした。



「ねぇ、稲葉」
「どうした?」

祐里香は稲葉が一人のところを狙って話し掛ける。

「あのね、料理のことなんだけど」
「料理が、どうかしたか?あぁ、まだ気にしてるのか。俺が教えてやるって、言っただろう?」

朝から溜め息ばかり吐いているのを見ていた稲葉は、祐里香がまだ料理のことを気にしていたのだなと心配だった。
───そんなこと、気にすることないのに…。

「それなんだけど」
「ん?」
「暇な時でいいんだけど、迷惑でなかったら教えてくれる?」

意地っ張りの祐里香が、自分に教えてくれと言い出すとは思っていなかった。
───ということは、また二人っきりになれるってことだよな?
例え気持ちが届かなくても、二人だけの時間が持てることが何よりも嬉しかったから。

「え?もちろんだ」
「ほんと?」
「あぁ、俺はいつでもいいから」
「あたしも、いつでもいい」
「じゃあ、週末にするか?」

「うん、ありがとう」と嬉しそうに微笑む祐里香を見て、もう何度も思うことだったが、ここが会社でなければ即抱きしめているところだった。
こんな稲葉が祐里香の本当の気持ちを知ったら、どうなるだろう?
まだ週が明けたばかりなのに、早く週末にならないかなと思う二人だった。
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