プリンな彼女


「あぁ…俺、いつのまに眠ったんだ」

2時間くらいは眠っていたようで、だいぶ楽になった稲葉はゆっくりとその場に体を起こす。
心配そうに見つめる祐里香の顔がすぐ目の前にあって、楽になった体が急にカ─ッと熱くなってくる。
もちろん、これは熱でも何でもなくて…。

「起きて、大丈夫なの?気分は?」
「随分、楽になった。なんか、迷惑掛けて悪かったな」
「そんなこと、気にしなくていいのよ。それより、お腹空かない?」
「そうだな、空いたといえば空いたかも」

朝も食欲がわかなくて、何も口にしていなかったから、すっかりお腹も空いていた。
祐里香と一緒に作る予定が、なぜかこんなことになってしまったわけで…。

「あたしが作ってあげられるのって卵おじやしかないんだけど、それで良かったら食べる?」
「え…新井にも作れるものが、あるのか?」
「ぶっ…。あのねぇ…あたしだって、おじやくらい作れるわよ。失礼ね」

───いくら料理音痴のあたしだって、おじやくらい作れるんだから。
それにこんな時だもの、好きな人のために作ってあげたいじゃないねぇ。

「じゃあ、作って。新井の卵おじや、食べたい」
「任せてちょうだい。あんまりにも美味しくて、また倒れたりしないでね?」

それなら倒れてもいいと思ってしまう稲葉は、すっかり彼女に惚れまくっていると言っても過言ではないだろう。

そんな稲葉の気持ちを知ってか知らぬか、祐里香はキッチンへ行き、早速卵おじやを作り始める。
とは言ったものの、おじやなんて自慢できる料理じゃないんだけどっ…。
手早く、15分ほどでそれは出来上がり、熱々の土鍋を彼のところへ運ぶ。
───我ながら、最高の出来だわ。
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