プリンな彼女
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それから暫くして、無事に会議もうまくいったと聞いてほっと胸を撫で下ろす。
あれから真紀ちゃんともすごく仲良くなって、会社帰りによく出かけたりもするようになっていた。
そんなある日、あたしが真紀ちゃんと話をしていると稲葉がやって来た。

「お前、今日すぐ帰れるか?」
「帰れるけど、なんで?」
「焼肉行くぞ?」
「え?あれ本気だったの?」

ちょうど一週間前の話になるが、次の日の会議で使う資料デ─タが壊れてしまい手伝った際、『まぁ、焼肉食べ放題で手を打つわよ』とあたしが言った言葉を稲葉はちゃんと覚えていたようだった。

「お前は、冗談だったのか?」
「そうじゃないけど、まさか本当に奢ってもらえるとは思わなかったから」
「じゃあ、そういうことだから。17:30に下な」
「もちろん、真紀ちゃんもよね」

あたしは、側にいた真紀ちゃんの方を見ながら言う。

「あぁ」
「真紀ちゃん、良かったね。稲葉に奢ってもらえるなんて、奇跡なんだから」
「でも…。私のせいで」
「真紀ちゃん、そういうことはもう言わないの。大体ね、こんなのと二人で行ったりしたら、あたしファンに殺されちゃうもの」
「おいおい、こんなのはないだろう?」

そんなあたし達のやり取りを見ていた真紀ちゃんが、笑い出した。
二人して、真紀ちゃんの方に振り向く。

「噂通り、稲葉さんと祐里香さんはとても仲がいいんですね」
「こんなヤツ、全然仲良しなんかじゃないわよ」
「お前なあ、さっきから“こんなのとか”、“こんなヤツとか”仮にも同期に向かって酷くないか?」
「あたしは、お前じゃない」

初めから、あたしは稲葉の話なんて聞いちゃいない。
呆れて声も出ない真紀ちゃんを尻目に言いたい放題。
苦笑しかできない稲葉だったが、やっぱりあたしには敵わないなと思ったのか妙に納得していた。
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