プリンな彼女
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「祐里香さん?」

給湯室にコ─ヒ─を入れに行っていた祐里香は、いつのまにか壁に寄り掛かって腕を組み、真剣に考え事をしていたようだ。
真紀ちゃんに声を掛けられなければ、いつまでもそうしていたかもしれない。

「あぁ、真紀ちゃん。真紀ちゃんも休憩?」
「はい。でも、祐里香さんどうかしたんですか?腕なんか組んで」
「うん。お弁当のメニュ─を考えていたんだけど、何がいいのかなって」
「お弁当ですか?」
「そうなのよ。稲葉に料理を教えてもらうお礼に、お弁当を持ってお花見に行く約束してるから」
「そこで、リベンジするんですね?」

料理でリベンジをと提案したのは真紀だったが、とうとうその日が来たようだ。
それと同時に、ようやく自分の想いも彼に告げるということ。

「上手くいくか、わからないんだけど」
「大丈夫です。絶対、上手くいきますから。祐里香さん、頑張ってくださいね」
「うぅ…すっごい、プレッシャ─かも…」

そこで上手くいかなかったら、今までの苦労は水の泡…。
だからどうしても、完璧なお弁当を作らなければならないわけで…。
そのメニュ─を考えていたのだが、どうもいまいち纏まらない。

「稲葉さんに教えてもらった通りに作れば、絶対大丈夫ですって」

───そうよね?
稲葉に教えてもらったように作れば大丈夫よね?
でなきゃ、何のために習ったのかわからないものね。

「うん。教えてくれた稲葉のためにも、頑張る」
「そうですよ、祐里香さん。あと、稲葉さんの胸に飛び込むのも忘れないで下さいね?」
「あ…」

───そうだった…。
肝心なことをすっかり忘れてたじゃない。
お弁当のことに気を取られて、大事なことを忘れるところだった。
自分の気持ちも、伝えなければいけなかったんだわ。
あたしに2つもできるかしら…。
あぁ…。
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