プリンな彼女
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テレビのニュ─スで桜の開花宣言が出され、週末に稲葉とお花見に行く約束をした。
メニュ─もバッチリ決め、仕事を終えて家に帰ると毎晩その練習に励む日々。

「週末は天気も良さそうだし、絶好の花見日和になりそうだな」

あたしがコピ─を取っているところへ、ちょうど稲葉が入って来た。

「そうね。お花、満開だといいんだけど」
「その前に弁当の方は、大丈夫なのか?」
「もうバッチリよ。任せて」
「すごい自信だな。期待してるよ」

お弁当は多分、大丈夫だと思うけど…。
もし…もし、気持ちを伝えて今の関係が壊れるようなことになったらどうしよう…。

「新井、コピ─終わってるぞ?」
「えっ、あっ、うん。ごめんね」
「どうした、ボ─っとしたりして」
「ううん、何でもない。コピ─なら、あたしがやって持っていってあげる」
「そうか?悪いけど、これ10部ホッチキス留めで頼むよ」

彼の後姿を見送って小さく溜め息を吐くと、稲葉に預かった書類をコピ─機にセットしてスタ─トボタンを押したのだった。

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土曜日は、稲葉の言っていたように快晴のお花見日和。
あたしは朝早くから起きて、お弁当作りに励む。
中でも頑張ったのは、だし巻き卵。
何度も練習してやっと上手くできるようになった一品だから、他のものはともかくこれだけは自信があった。

「ごめん、待った?」
「ううん、あたしも今来たところだから」
「随分、大きな荷物だな」

そう言って、稲葉はあたしが持っていた手提げバックを持ってくれる。
お弁当を頑張って作ったから、荷物が予想以上に大きくなってしまったのだ。

「お弁当頑張って作ったら、こんなになっちゃった」
「そうか、楽しみだな」

二人肩を並べて歩いていると、同じ方向に歩いて行く家族連れやカップルがたくさんいた。
みんな、お花見に行くのだろう。
既に場所取りをしている人達もいるだろうから、自分達がお弁当を広げるスペ─スがあるかどうか。
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