プリンな彼女

story20

「稲葉、つぶれちゃったな。新井さん、一人で大丈夫か?」
「多分…」

中川君とあたしは、酔いつぶれた稲葉を見て溜め息を吐いた。
居酒屋での一次会が終わり、次は別の店で二次会、最後はカラオケで三次会となったのだが、さすがに彼は酔って寝込んでしまった。
───こんなに飲んで…。
そうは思っても、同期で久し振りに集まれば楽しくないはずがない。
まして明日は休みだし、羽目を外したくもなるだろう。

「楽しかったんだろうな。こいつがこんなになったのって、見たことない」
「うん、そう思う」
「俺さ、抜け駆けしようと思ったんだ」

「稲葉が新井さんのこと好きなの知っててさ」と話す中川は、いつもはもっと飲むはずなのに幹事というのもあったからかあまりお酒を飲んでいないようだった。

「え?」
「っていうか、稲葉があまりにじれったいから鎌を掛けた」

中川は随分前から、いや入社当時から稲葉が祐里香に好意を持っていることを知っていた。
なのに、あまりに稲葉が自分の気持ちを言おうとしないので、同期として一肌脱いだ…つもり?
彼自身も祐里香に想いを寄せていたのは事実だから、隙あらばと思わなかったわけではない。

「それで、あたしを誘ったの?」
「あぁ。いやぁ、あの時、駅に稲葉が来るとはな」
「あたしも不思議なんだけど、どうして稲葉が知ってたのかなって」

───そう言えば、何でか聞いてなかったわね。
どうして、稲葉が中川君と駅で待ち合わせていることを知ってたのか…。
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