迷姫−戦国時代
櫛を見せた間々、翡翠色の双眼は五郎の姿を映している


笹木はフッと笑みをし手元にある櫛を高く投げ出した

急な展開により五郎は慌ててそれを受け止め様として動いた・・・




















カツン





静寂した部屋の中、櫛が畳の上に落ちた音だけが響いた






「もう帰ってよいぞ。緑には後日使いを出す、と伝えよ」
笹木は背を向けまた庭を眺めていた

「御意・・・」
そう言われた五郎は庭から出て塀を飛び越え鶴水城を後にした















木々を抜けて行く中五郎の心臓は今にもはち切れそうであった

そしてさっきの光景を思い出す

何故あの時己は動かずただ立ち尽くしていたのか

あれは笹木の策略だったのである
否もしかしたら己は始めから彼の策略に置かれた状況だったのかもしれない


もしあの時櫛を受け止めていたら彼は姫の存在を確信してただろう。又それと同時に何かがあると感づかれるだろう


だが聡明な彼はあんな事をしなくても確信してた筈だ
何故だろ

「っあーーー!!オイラ分かんないよそんな事!頭使うのは称に合わないんだよー」
悶えながら翔けて行く五郎であった





その頃庭を眺めていた笹木はつまらなそうな表情をしていた


「ち、鎌を掛けてみたのだが早々に出る事は無いか。流石忍よ。某もまだまだ爪が甘いの・・・」


だが此度の件で報酬は出た

櫛を見せた後の五郎の異変であった。平然を繕っていた様だが一つだけ異変があった


それは呼吸だ



人間は嘘を付く時には必ず異変がある。その一つが呼吸の深さだ






五郎、あ奴は必ず何か知っておるだろう





そしてそれは緑についてだろう



フッ面白い何時まで隠せるか見物だ。必ずしも某がそれを引き出してみようぞ





覚悟しろ







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