迷姫−戦国時代
少したった先には小さな祠とその少し離れた所に大きな木箱が置いてあった

箱は頑丈そうに作られており簡単には壊せそうにない物である
眼帯をした男は馬から下りて木箱に向かい扉を引いた

扉を閉め文を握りながら男は馬へと戻ってきた

「これだけの様だ」

馬に跨がる男に確認させ己も馬に跨がろうとした時であった

















「漸くお出ましかのう。長旅の所悪いのじゃが早速依頼を頼みたい」

目の前には首に大きな刺繍がしてある忍の収束をした男が立っていた

馬に跨がっている男の方が口を開いた

「何だ、浬張の忍か。それも長(おさ)の男か。確か万助と呼ぶ男だな」

「流石じゃのう。儂とお主はお初目だと思うのじゃがな」

「ハッ、俺はそんなやわじゃない。あんたが見てなくても俺は知ってるんだよ」

「此度の五加木の当主はあちらこちらを嗅ぎ回ってると見たのう。此様子だと依頼を受けてくれるのか?」

「差し詰め、あのおっさんが何を俺に聞きたいかは理解済みだ。善いだろう、その依頼受けるぞ。明日には国を発ちそちらに向かう事にする。早ければ一月未満には着くだろう」

「なら儂は明日此処で待つ。護衛を頼まれたからの」

「生憎俺達は他人に護られる様な柔な男じゃない。だが、好きにすればいい」

馬の歩を歩め先に進もうとしてふと振り返った

「長旅のあんたも休んだらどうだ。特別に許可を与える」

「生憎だが儂はこちらの神に気に入られんかもしれぬから結構じゃ」

「そうか」

そして二人は祠から先に進んだ。辺り一面濃い霧の立ち込める木々の中を迷わずに進んでいったのであった



万助は目の前に広がる濃い霧を眺めていた


此処から一歩進みば五加木の国
だがこの国境を越えれば濃い霧が立ち込めてありむやみに入ったりすれば命は無いと分かっている

此処国は此国の神により護られてるも同然である
国に入れるとしたら此国の者かはたまた神に許された者、好かれた者かである


「しかし杉藤の若当主・・・。噂以上のとんだ若造じゃのう」





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