迷姫−戦国時代
徐々に里丸の顔が見えてくると、狛津は己の泣いてる姿を見られぬように・・・




「・・・あんちゃん!」

「・・・なんだ里丸」



「・・・前が見えないよ!
それに若干痛い!」



狛津は里丸が近づき寸での所で己の手を里丸の顔を鷲掴みした姿は下手すれば脅迫紛いな様子の一部始終である


あれこれ文句を言うが退けられる様子はなく、口を尖らせると「まあいいや」と答えた


「俺さ、あんちゃんが大好きなんだ!あんちゃんを尊敬してる。オイラずっとずっと待ってたんだよあんちゃんを。オイラをあんちゃんの弟子にしてください!」


唐突な言葉に狛津は涙が止まり、目を見開いた。手に隠れてる筈なのに里丸は真っ直ぐに瞳を向け、本気だと示していた




冗談はよせ・・・。俺は教えるような人間じゃない




つい先日まではそう言っていただろう。だが俺は沈黙し手に持っている文を視界に映した






『逃げてはいけない』


あいつの言葉と美羽の言葉が被って俺に聞こえてきた。幻聴だとしても、




「俺の全てをお前に伝授する。その覚悟、お前にあるんだな?」



俺は一歩前に踏み出せた



手を退ければ里丸の顔が現れ、真剣な顔付きで俺を見れば、はっきりした口調で一言返した



「はい」








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