迷姫−戦国時代

瓦が反射し黒と白で統一された高くそびえ立つ城

城の周囲にある堀は深くまた塀は高く造られ圧倒巻を醸し出している

数々の城の中でも、烏山城は一度も墜とされた事がないと表にも綴られていた。確かに近くで見ても納得する程の立派さであるが幾度も目にしたことがある五加木の二人は平然と城の門を潜った



馬を預け城内へ入れば家臣の一人が現れ部屋まで案内すると言われるが杉藤はそれを断った

「部屋は後でいい。呼んだ主は大層首を長くして待ってただろうからな。早々俺一人で向かう」


己の家臣を部屋で待機させ、颯爽と前に進んで行った杉藤の姿に案内役は慌てた様子でその後を着いて行ったのであった









「殿、杉藤殿がお越しになりました」

「入れ」

重々しい声が返ってくれば襖が開かれ杉藤は「失礼する」と一言添え中に入っていけば中央に座った

目の前には一段高い座敷があり、この上座にはこの国の当主である楠木が座り腰掛けてこちらを見ていた

「楠木殿久方ぶりで。旅先、少しばかり日が送れてしまい申し訳ない」

「構わぬ」

部屋には先程まで重臣達が居ただろう雰囲気が伝わってくる

(どうやら会議でもしてたのだろうが、態々人払いさせてしまったようだな。まあこれも条令の一つだしな。

さあ、始めるか)



「堅苦しい挨拶は互いに時間を食ってしまう。早速本題に入りたいのだが・・・」

先程とは一転してニヒルな表情をした杉藤に楠木は嫌味たらしく舌打ちをすれば襖の向こうから万助が現れ赤と黒で統一された巻物を楠木に渡した


「これで良いだろ。先日の千紫までの行路と策だ」

杉藤は楠木から巻物を受け取れば、巻物を広げ一通り目を通せば巻き戻し楠木の方へと顔を向けた



「確かに、交渉成立だ。
で、要件は何なんだ?」



「お主は此度の戦を直接見ておるのじゃな。


生き残りがいるのじゃな?」



< 203 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop