迷姫−戦国時代
美羽達はがむしゃらに走りながらも木々の奥へ奥へと走って行った

木々から出た先には美羽が先程居た場所、桜が咲いている場所へと来ていた

こんな時でも
桜を美しく感じた


少年は桜の余りの綺麗さに立ちすくんだが今はそんな事ではないですとの美羽の言葉に我に還りまた走り出した



桜を抜け様とした刹那、目の前に見知れた一人の男が現れた


「浅波、無事だったんですね!」

「美羽様、ご無事でなによりで。この浅波が居る限り安全でございます」



「よかった」
安心し胸を撫で下ろした美羽は少年の方を見て

「貴方にはいくつか質問させてもらいます。良いですね?」

「・・・はい」
自分よりもまだ幼い少女が真剣こちらを真っ直ぐに見すらえるので少年も真っ直ぐ見つめた



「ではまず貴方は何故、生きる事を辞めたのですか」

「・・・っ!」
美羽の質問に応え無い少年を見て美羽は質問を換えた

「私の名前は桜美 美羽です。そして私達を助けてくれたのは浅波と言う忍でございます。貴方の名前は何と呼ぶのですか?」
その顔は実に暖かく、優しく微笑み相手の警戒心を解かせるものだった

「・・・俺に名前は、無いです。生まれた時から」
応えた時の少年の顔はとても冷たい表情をしていた


「では・・・「君には単刀直入に言わせてもらうね。俺は此処千紫の当主、桜美 武則様に使えている忍だ、そして美羽様は此処の姫君だ。この時点で君も忍なら分かるだろう」浅波・・・」

「忍は、常に疑う・・・。決して気を緩める事はいけない。主に近づく者は常に疑い続ける。それが“忍”。分かってます、貴方は俺がこの方に害が有るか否かを、聞いているのですよね」

「そうだ」





三人が静寂している中、桜だけが風に揺られて舞っていた








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