迷姫−戦国時代
此処は千紫
曾ては桜美家が納めていた領土。しかし浬張との戦で血筋が途絶えてしまったと一般の民が口々する

だが、真実を知らされているのは一部の者しかしらない。地位も家族も失った孤独な姫の事を・・・








一人の忍・・・朝波は美羽達と別れた後に漸く千紫に辿り着いたのであった


「はぁ・・・俺も年か」


朝波は変装し開拓された歩きやすい見慣れた道程を歩いていた。千紫に着きまず初めに朝波が向かった場所は千紫全体が見渡せる山の麓であった



目的地に着いた朝波は手元に持っていた茶菓子と百日草を添え千紫全体を見渡せるように佇む墓石の元へと置いた







「・・・やはり貴方でしたか」

そこには朝波と同年ぐらいの男が片手に水桶と風呂敷を持って朝波を見つめていた



男はそのまま朝波の元へ歩み寄り一度深く礼をし手を合わせ終えてから、不意に墓石へと移り添えられた百日草を見つければ目を細めて持ってきた風呂敷をほどいた


「・・・これは百日草か。今は亡き友を思う・・・だったか」

果物等添え終えた男は朝波同様に麓から見える千紫を眺めた





「来て早々だが、早く発たれよ。この国は蜘蛛の巣の様に常にあの方の監視の目が張り巡らされている」

「ならば巫女殿も、その者によってなのかい?」



ああ、と腰を下ろしたまま男はそう返せば「他には?」と聞いた



「此処を寄る前に神社の・・・御神木の所に寄ったよ。あの状態は・・・ずっとあのままなのかい?」


朝波は苦虫を噛みつぶしたような表情をしたまま隣にいる男に向かって尋ねた


「本来なら、然るべき者が解決をしなければならない。昔から然るべき者が国を納めなければ国は滅びると聞かされている」



男が言う然るべき者・・・それは神と意志疎通が出来る血筋だ。この国では、桜美家の唯一の生き残りである美羽だけであった。しかし彼女は今国に滞在していないなか、最悪の場合は解決策が見付からないかもしれない

「何より、仮に宛てられた者がこの国に興味がないのだ」


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