迷姫−戦国時代
山道を二頭の馬が駆けていた。だが馬の一頭の轡を前の馬の尾に繋いだ様子だった
前を走る馬に乗った男は後ろにいる人物に話し掛けるように声を大きく張り上げた
「この道は山賊が多いと言われる。もっとも我々を狙う者はいないだろうが気を抜くな」
「分かったわ」
後ろに乗った女は男の言葉に頷き、一旦回りを見回した
「(先程聞いた話によれば此処は比喜の国。数十年前のある不祥事により当主不在のままだと言われた国。その隙に浬張が狙ったということね)」
不意に美羽は十日前の事を思い出した
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「玄司様。お願いがあります。私共に長期の旅をもろともしない逞しい馬を売ってはくれませんか」
「うぬ、馬か。それについては問題ないが、浬張へ行く道は険しいぞ」
「馬を借りれるならば問題ない。我々は比喜(ひが)を横断するつもりだ」
「比喜か・・・。治安が悪いが確かに言えてるの」
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比喜を抜ければ二十日ぐらいで浬張に着くと聞いたわ
美羽は苦しみからまぎらわすように胸を強く押さえ付けた
太陽が嫌らしく照らされる中、木々に視線を移せば、視界に妙なものが入った
それは息をも飲むほどの
なんて綺麗な銀鼠・・・