迷姫−戦国時代
「さて、話しを戻すが美羽が身を隠す場所はもう決まっておる。そこは我が領地の山じゃ。城のすぐ後ろのじゃ」


「近いだろ?美羽が何時でも帰って来れる様に近くにしたんだ。それにあの山は敵がそうそう入れるほど簡単な山じゃないからね。いい案だろ?」
横にいる秋影がニコリと微笑んで美羽を見つめた


「はい、ありがとうございます。では・・・出発は何時でございますか?」


「うむ、三日後と考えておるのじゃが」
顎に手をつけ間を置いて話す武則を余所に三日間は苦難の末に与えられた期間であったのだろう

「私が身を隠す間は、私の事は皆にどう説明するのでございますか?」

「消息が行方不明・・・・それしか無いのじゃ」

「分かりました。
ですが、私はキヨが気掛かりです」

「キヨの事は大丈夫じゃ。安心せい」

「(全ては私のため・・・)して、今の戦の状況はどうなのですか?」

「うむ、今は浬張(りちょう)の・・・楠木が力を付けてきているがまだこちらには害はないじゃろう。此処からはまだまだ距離がある、それに時間が掛かるのだからな。他は変わりない」

「(それならまだ千紫は無事ですのね)・・・・安心です。
ですが父様、兄様、私は時が来るまで山から一切下りません。どうか私のわがままを許して下さいませ。これは私のけじめでございます」

頭を綺麗に下げ懇願する美羽に父武則はゆっくりとした動作で美羽の頭を撫でた


「分かった。だが、儂らからそなたのいる山に行くのは問題ないじゃろうに。そうじゃろう?」




「はい・・・・父様」

武則の言葉に驚きながらも美羽はしっかりと返事をした







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