迷姫−戦国時代
「貴女様はもしかしてこの国の・・・」

女性の風貌は恐ろしく整った顔立ちに髪、瞳と共に薄い色素茶色をし菫色に鶴や桜などの刺繍を施してある打掛を着て、女である私もついつい見とれてしまう美しい女性・・・正しくは千紫の神―――皇朱様(こうしゅ)でありました



美羽は深く頭を下げながら
「貴女様の場所に無断で入るなど、無礼を誠に申し訳ございません。ましてや美しい千紫を戦により血で汚すなど、どうお詫び申し上げればよろしいのですか・・。私は今敵兵から逃れ生き残る為、どうか一晩だけ此処に身を置くのを許して下さいませ」




皇朱様から香る香しい紅梅が自然と意識を遠退かされそうになるが美羽は唇を噛み意識をしっかりと保ちただじっと頭を下げていた

「顔を上げなさい桜美家の者よ。して、名は何と名乗るのです」

美羽は顔を上げて背筋を伸ばし凛とした声で
「私の名は、美羽と申します」


「そう美羽。・・・良い名ね。そなたは、この国をどうする?」

ただ一言発したその言葉の内容はとても重く皇朱様は私を試しているのだと分かった

「私は奪われてしまった千紫を取り返し戦で無くなった父様、兄様が望んでいた美しく争いごとの無い平和な国にしたいのです。ですがいざそれを実現するには今の私には力がありません故、今私が出来る事は生き残る事なのでございます」



美羽は真っ直ぐな眼差しを皇朱に向けた

やはり皇朱は何処か悲しみを持ちながら美羽の言葉を聞いていた

「そなたの志はしかと聞きました。故に此処に一晩身を置くのを許しましょう」

その言葉に美羽はまた深く頭を下げた

「ありがとうございます」






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