Complexxx.
ドンッ
女の人の大きい鞄が私の腕に当たった。
痛っ…。
鞄の中の何か固いものが腕に当たって痛みが走った。
「ごめんなさい」
女の人はチラッと私を見て軽く謝った。
腕を押さえて俯いていると男の人の方が駆け寄ってきた。
「すいませんでした。腕、大丈夫ですか?」
「はい…。大丈夫で……えっ?」
はい。大丈夫です。っつ答えようと顔を上げると、そこには上村先輩が立っていた。
「あ…先輩!」
「谷村!!」
「買い物か?」
「あ、はい。」
「先輩も買い物ですか?」
「まぁ、そんなかんじ。それより腕、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。ちょっと当たっただけなんで。」
「でも、赤くなってる…。」
押さえていた手を取ると確かに赤く少しはれていた。
「本当に大丈夫なんで。」
「そうか、本当にごめんな。じゃぁまた明日。」
先輩は申し訳なさそうにそう言って女の人の方に歩いて行った。