冴えない僕とアイドルBOYS!
ノリのいい洋楽が流れ出した瞬間、ステージ上の彼らが楽しそうに跳びはねる。踊る。
客も手を高く上げて跳びはねている。メンバーの名前を呼ぶ声も聞こえる。
会場は、ひとつだった。
意外と短めに曲が終わり、メンバーは一度ステージ横にはけて、マイクを手にもう一度ステージに上がった。
「こんにちはー!CHAMPです!」
「グループ名だけでも覚えて帰ってくださいねー」
なんて、短い挨拶をしている。
すごくすごく、いい笑顔だった。
次の曲は、某人気アイドルのヒット曲のカバーを披露するはずだ。
スタンバイをして、曲が流れるほんの一瞬前、真・アディソンがちらりと僕の方を見た気がするのは錯覚なのかなあ。
と、曲が流れ、桜庭明翔がマイクを口元へ持っていき声を吹き込んだ。
瞬間、時が止まったかのように客が静まりかえった。
そしてまた一拍おいて、先程よりも大きな歓声と手拍子が鳴る。
―――上手い。