もう一度…
始まり
01…序章
もう大切な人はつくらない、私はそう決めていた。
ー…だから誰も知らないところに来たの。
01…序章
「ー…お父さん、お母さん。行ってきます」
私は古くなって茶色くくすんだ写真に向かってそう呟くと、一回目を閉じて深呼吸をしてから家を出たーー。
私の名前は槇村砂菜(まきむら さな)。
今年17歳の高校二年生。
今日から私の新しい高校生活が始まるの。
「あ、この道綺麗…」
春。
4月ではないにしろ桜の花はまだ散っていなくて、登校途中の満開の桜道に私はつい足を止めて見入ってしまった。
「ー…」
サラサラと薄桃色の小さな花びらが風に揺れて道に落ちる。
その様はすごく儚げで、それでいて…どこか切なくて。
砂菜が開いた両手を前に出すと、その小さなかけらが一枚手のひらにヒラリと落ちてきた。
ー…こんなの前の私だったら絶対しなかっただろうな。
桜を見て感傷に浸るなんて。
桜の木になんか目もくれず遅刻ギリギリで慌ててこの道を走り去る自分の姿が容易に想像できて、砂菜は少しおかしくなった。
それでもその場を暫くは動く気にはなれない。
「馬鹿、だな…」
今更になって自分の周りにあった小さな事が綺麗で、貴重だって事に気づくなんて。
私って…
「…ほんとに、…馬鹿」
ー…私の命はもう、少しかないのに。
ー…だから誰も知らないところに来たの。
01…序章
「ー…お父さん、お母さん。行ってきます」
私は古くなって茶色くくすんだ写真に向かってそう呟くと、一回目を閉じて深呼吸をしてから家を出たーー。
私の名前は槇村砂菜(まきむら さな)。
今年17歳の高校二年生。
今日から私の新しい高校生活が始まるの。
「あ、この道綺麗…」
春。
4月ではないにしろ桜の花はまだ散っていなくて、登校途中の満開の桜道に私はつい足を止めて見入ってしまった。
「ー…」
サラサラと薄桃色の小さな花びらが風に揺れて道に落ちる。
その様はすごく儚げで、それでいて…どこか切なくて。
砂菜が開いた両手を前に出すと、その小さなかけらが一枚手のひらにヒラリと落ちてきた。
ー…こんなの前の私だったら絶対しなかっただろうな。
桜を見て感傷に浸るなんて。
桜の木になんか目もくれず遅刻ギリギリで慌ててこの道を走り去る自分の姿が容易に想像できて、砂菜は少しおかしくなった。
それでもその場を暫くは動く気にはなれない。
「馬鹿、だな…」
今更になって自分の周りにあった小さな事が綺麗で、貴重だって事に気づくなんて。
私って…
「…ほんとに、…馬鹿」
ー…私の命はもう、少しかないのに。