夏恋
静かな時が流れていく。
窓から入ってくる風に、お気に入りのカーテンが揺れる。
薫が動こうとしないから、あたしも動かない。
だいたい、今、薫が顔を上げたとしてもあたしはどんな顔をしたらいいのかわからないから。
だから、動かない。
…プルルル。
そんな時に、流れてきた着信音。
ケータイに目をやると“飛鳥くん”と記されていた。
…プルルル。
ケータイを取ろうと手を伸ばしたときだった。
「出ないで」
思わず手を引っ込める。
「俺にこんなこという資格なんてないけどさ、出てほしくない」
小さくか細い声。
抱き起こされ、真っ直ぐに見つめられた。