夏恋
正面から肩に顎を置いて、手を繋ぐ。
そこには恋人みたいに、甘い雰囲気があるわけでもなく。
苦しくて、切なくて。
甘えてくる薫にどうしたらいいのか、わからなかった。
「薫…」
「…」
「ちょっと離れない?」
そう言うあたしに、繋いだ手に力を込める薫。
「離したくない…」
「かお、る…」
「惚れさせてやるなんて、大きな口叩いといて笑えるよな…」
弱々しく言う薫に、あたしは首を横に振る。
「そんなこと…ないよ」