夏恋





自然と涙が溢れる。



あたしはどれだけ薫に酷なことしてきたんだろうか。


知らなかったとはいえ、たくさん酷いことも言った。


兄弟みたいに育ってきたから、なんでもわかっているつもりで



なんでも、言い合える関係だなんて思っていたのは自分だけだったんだ。



肝心なことは、あまりにも近すぎて言えてなかった。



「薫…今まで気づいてやれなくてごめんね…薫はあたしにとってすごく大切な存在だよ?」



「……」



「でも…でもね、あたし飛鳥君が好き…だから、ごめん…」



そう言い終えた頃には、薫はあたしから離れていた。


「…俺はお前の大切な存在じゃなく、好きな人になりたかったよ」



「……っっ…」



痛々しいほど悲しく笑う薫に胸がキューと締め付けられた。



部屋から出ていく薫に、言葉が喉に詰まって泣くことしか出来なかった。



薫の香りが漂う部屋で一人とてつもない空虚を感じた。






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