夏恋
それなら、あたし飛鳥くんと別れてもいい。
飛鳥くんへの気持ちが薄れたわけでも、なくなったわけでもない。
今でも、優しい飛鳥くんが大好き。
でも、あたしね…
それ以上に、薫と話せないことがケンカ出来ないことがこんなにも辛いの。
そう思ったあたしは、練習中だというのに、気づくとグラウンドに向かってズンズン歩き出していた。
「…っ!」
練習している薫を、通りすぎ真っ直ぐ飛鳥くんのもとへと歩いた。
「飛鳥くん、練習中ごめんね…」
「…ああ。いいけどどうした?」
汗を拭い、優しく微笑む飛鳥くんに少しだけ決心が揺らぐ。
でも、言わないと。
きっと、大切なものを失う気がするから。