夏恋
「…あたしね、考えたんだけどやっぱり飛鳥くんとは付き合えない」
「…………わかった」
なにも、反論することなく頷く飛鳥くん。
薫は黙ったままそっぽを向いている。
「……ありがとう、好きって言ってくれて。あたしも好きって気持ちに嘘はないよ」
あえて、理由は言わなかった。
薫と話せないから、なんて言われて飛鳥くんはいい気しないと思うから。
すると、黙っていた薫がいきなり飛鳥くんに掴みかかった。
「…なんで、引き止めねぇんだよ!?あ?文句の一つぐらい言えよ!余裕ぶってんじゃねぇ!お前すげぇ真麻のこと好きなんだろ?な?ならなんで何も言わねぇんだよ…」
「…っっ…」
飛鳥くんは悔しそうに、横を向くだけで薫を振り払おうともしない。
「おい!何とか言え!好きなんだろ?カッコつけてる場合じゃねーだろ!?バカヤロウ!」
声が枯れてまで、言い散らかす薫。
その目には、涙が浮かんでいて
「俺なら…っ ぜってぇ手放さねぇのに!…っ 贅沢なんだよ!」
そう言って、飛鳥くんから手を離した。