夏恋
いきなり手を離された飛鳥くんは、地面に尻から叩きつけられる形となって倒れた。
「飛鳥くん!大丈夫っ?」
慌てて飛鳥くんに寄る。
でも、飛鳥くんはあたしに応えることなく小さく呟いた。
「………よ。」
「は?」
「贅沢なのはどっちなんだよ!」
こんなに怒鳴る飛鳥くんは初めて見た。
怖いくらいに、薫を睨み付けていて薫も驚いたようだ。
「はっ…なに、切れてんだよ?」
意味わかんねぇ、と言う薫に今度は飛鳥くんが掴みかかった。
「別れたくなんてねぇよ… 好きな女がやっと手に入ったんだ」
震える手に、震える唇。
飛鳥くんは怒りを堪えるように、低い声で言った。
「お前のせいなんだよ… お前のせいでこうなってんのに… ぶざけんなっ!」
怒鳴って薫を投げ飛ばした飛鳥くん。
あたしは開いた口が塞がらなかった。