夏恋
遠い…
薫がすごく遠い…
なのにこれ以上遠くに行っちゃうなんて、考えられないね。
「真麻ちゃん?」
「……飛鳥、くん」
振り返ると、やっぱり変わらない優しさいっぱいの笑顔の持ち主。
飛鳥くんにもたくさんお世話になって、迷惑かけて、大好きだった人。
あたしの初恋の人。
「真麻ちゃん…」
「ん?」
「真麻ちゃんに大切な話があるんだ。ちょっといい…?」
「…?」
そう言って、連れてこられたのは校舎裏。
少し湿った空気で独特の雰囲気を放っている。
ジャリ…
「飛鳥くん、話って」
立ち止まると、すぐにあたしは口を開いた。
「うん、話っていうのはね」
「うん」
「まだ真麻ちゃんのこと好きなんだ、すごく だからもう一度付き合って欲しい」
「………」
正直ビックリした。
でも、ドキドキしなかった。
まだ、あたしの心にはしつこい奴が住み着いているから。
ううん。しつこいのはあたしか…