恋花~桜~
すると…

廊下で小声で話す俺らに、トイレの方から戻ってきた保科さんが声をかけてきた。

「どうしたの?二人でひそひそ話してて~」

ニコニコしながら、保科さんは近づいてきた。

「いや…その…あの…」

どう答えていいかわからなくて、俺がしどろもどろになっていると、

「何も言わないってことは・・・」

怪しむ保科さんに対し、小野が口を開いた。

「いやぁ、ちょっとさ・・・」

さすがの小野も、言葉に詰まっていた。すると、保科さんは思いもよらぬことを言い出した。

「前からあやしいアヤシイとは思ってたんだけど・・・」

《前からアヤシイって!?》


ちょっと間があった。俺は固唾を呑んで保科さんの一言を待った。


「やっぱり二人はできてるのね!」

「はぁ!」

俺と小野は、声もリアクションもそろってしまった。 俺らはたしかに仲良いけど、まさかそんな風に保科さんが思ってたとはな・・・


「違うよ~!そんなわけないじゃないか!俺は女の子が好きな健康男児だよ」


俺はきっぱりと否定した。保科さんにホモ扱いされるのはゴメンだ。


負けじと小野は、俺に対して最大の武器を放った。

「俺だってそうだよ。高田とは違ってちゃんと彼女だっているんだから」


うぐ…

でもそんなことで怯む俺じゃない。

「なんだよそれ!年下の彼女が怖くて言いなりになってるくせに・・・」


「うぐ…」


小野は中学の頃から一つ年下の彼女に頭が上がらなかった。見た目はかわいいんだけど、なんか怖いんだよな…


俺の勝利かと思ったが、保科さんが


「それはきっと小野君が優しいからじゃないの?」


え?保科さん、小野に味方するのかよ!


「そうそう!男は優しさが一番なんだよ!」


保科さんに援護射撃をもらった小野は息を吹きかえした。


気がつくと、いつの間にか身体の震えが止まっていた。


保科さんに救われたような気がしたんだ。
< 18 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop