恋花~桜~
《はぁ…》

今日初めて酸素を肺の奥まで吸った思いがした。

「高田君、どうしたの?大きなため息ついちゃって」

「えっ?あ、いや…」

俺も弁当を取り出した。

「もしかして具合悪いの?」

保科さんは気付いていた。俺の様子がおかしいことを。

「そんなことないよ。ちょっと寝不足気味だからさ」

とっさに嘘をついた。

「ふぅ~ん。ならいいんだけど。ま、高校生なんだから、夜更かしは当たり前よね!私なんか12時までテレビ見ちゃってたんだ!」

「12時まで!!」

「うん!授業中眠くて眠くて大変だったわ。ふわぁ~」

普通あくびは間抜けな顔になるものだが、美少女のあくびはなぜかキュンとなってしまう。綺麗な花を見ると人の心は安らぐ。俺も奴らのいないこのわずかなひとときを、保科さんを見て安らぎを得ようとした。


しかし、次の体育の時間は地獄だった。

体育着に着替えた俺たち男子は、担任の体育の先生の指示で体育館に向かった。

「今日はバレーボールをやるぞ。それぞれ6人ずつのチームを作りなさい」

俺は小野と同じチームになった。4チームできた。

「それでは今からバレーの試合をする」

清野のいるチームがやけに盛り上がりを見せた。

「よぉし!絶対勝ってやるぜ!」

嫌な予感がした。どうみても清野のチームが勝つに決まっている。運動神経のいい奴らがそろっているし、しかもバレーボール部に所属している奴もいるのだ。

《ま、目立たない程度にこなそう》

…それは浅はかな考えだった。

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